あるところに、ゼロという名前の子供がいました。
「いい学校にいき、いい仕事につき、
一生懸命に働き、貯金をしなさい。
それが幸せなお金持ちになる道ですよ。」
ゼロは親の教えが正しいと信じていました。
しかし、ゼロは不思議にも、繰り返し、同じ夢を見るのでした。
「ジャングルの秘境にあるお金のなる樹」の夢。 |
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大人になると、ゼロは仕事を見つけて、働き始めました。
朝早く仕事に出かけ、夜遅く家路に着く。
来る日も来る日も、みんなと同じように懸命に働きました。
いつの間にか「お金のなる樹」の夢を見ることがなくなり、
「階段」の夢を見るようになりました。
ゼロは階段を登る先輩たちの後を追っています。
競争して、追い越し、またひとりと追い越していく。
けれども、階段を登りつめて、最後に見えたのは・・・
ひとの背中でした。
それ以上先へは進めません。
振り返ると、後ろからは多くのひとたちが互いを押しのけ、
狭い階段を登ってくるのが見えました。
迫り来るひとの群れに焦りを感じていると、
どこからともなく声が聞こえてきました。 |
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「自由が欲しければ、勇気が必要だ。
登ってきた階段から飛び立つ、勇気がね・・・」
ゼロは恐怖に心震えました。
「飛び立ったら、大怪我をするにちがいない。
大怪我だけでなく、生きるのが苦しくなるかもしれない。」
ゼロは心の中でそう呟きました。
その後、ゼロは何度も同じ「階段」の夢を見て、
いつも同じところで目を覚ますのでした。
ある日、またいつもの「階段」の夢を見ていると、
あの声の続きがどこからともなく聞こえてきました。
「・・・
もし、あなたが心を開き、
素直な心で私の声に耳を傾けるならば、
怪我をせずに着地できる方法を教えてあげよう。
今度は、他のひとたちと協力し、助け合いながら、
自分の階段を1つずつ、築き上げていけばいい。
いつだって見えるのは、ひとの背中ではなく、青空だ・・・」
「青空・・・」
ゼロは目を閉じ、両手を翼のように大きく広げ、
勇気を出し、自由を求め、大空へ羽ばたきました。
そこでようやくゼロは目を覚まし、
その日を境に「階段」の夢ではなく、
「お金のなる樹」の夢を再び見るようになりました。
でも・・・
どこに行けば「お金のなる樹」が見つかるのだろう? |
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