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    ある日、ゼロは散歩に出かけました。
    山道を歩きながら、独りこう考えました。

    「私は今まで自分のことばかりを考え、
    いつも何かを求めてばかりいた・・・
    これからは、求めるだけではなく・・・
    ひとに何を与えることができるのだろう?
    私には何ができるのだろう? 」

    そう考えながら森の中を歩いていると、
    道が2つに分かれる岐路に立っていました。

    ゼロは足跡が少なく険しい道を選びました。

    ゼロは今まで歩んできた道から外れ、
    道なき道に迷い込みました。
    夜になり、あたりは一寸先が暗闇で何も見えません。

    つまずき、転び、起き上がり、
    つまずき、転び、起き上がる。
    何度も何度もつまずいては転び、
    道なき道をあきらめず、
    倒れる度に何かを掴み、
    一歩、そして、また一歩と進み続けました。

    すると、遠くに小さな光が見えました。
    疲れ切った身体を引きずるように、
    その小さな光を目指して歩き続けました。
    やっとのことで辿り着いたその光の正体は、
    古びた山小屋からもれる明かりでした。

    その小屋にはおばあさんがひとり住んでいました。

    ゼロの心を見透かすように、
    おばあさんは微笑みながらこう言いました。

    「お金など取りゃせん。
    ご飯を食べてゆっくりしていきなさい。
    元気が出てきたらまた歩き出せばいい。」

    ゼロは温かいご飯をご馳走になると、
    すぐに眠りに落ちました。

    翌朝、小鳥のさえずりと共に、
    ゼロは目を覚ましました。

    ゼロは今までのことをすべて
    おばあさんに正直に打ち明けました。
    「お金のなる樹」や「階段」の夢の話。

    するとおばあさんは「お金のなる樹」の秘密について
    色々な教えを交えて話をしてくれました。

    別れ際におばあさんからひとつの種を譲り受けると、
    おばあさんは微笑みながら、こう言いました。
    「いいかい、ゼロ。
    これがお金のなる樹の種じゃ。
    この種はそこらの樹とは違ってな、
    汗と涙の数だけ根は深く張り、
    感謝の心の数だけ枝葉は広がっていくのじゃよ。」
     
     
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